前回、「鉄とタンパク質」の重要性について少し触れました。
鉄とタンパク質の重要性は、妊娠中に限った話ではありません。
特に、「鉄」が足りていないと、糖質制限そのものがうまくいきませんし、他にもさまざまな不調をきたします(鉄不足による不調の数々については、前回ご紹介したリンク「鉄不足だと痩せない」に列挙されていますのでぜひご覧ください)。
鉄不足によって貧血が進行すれば、医療機関で行われる通常の採血で気が付かれますが、問題なのは、通常の採血では現れていなくても貧血と同様のさまざまな不調をきたす『隠れ貧血』です。この「隠れ貧血」かどうかを判断するのが、「貯蔵鉄」を意味する「フェリチン」という値なのですが、一般の採血で問題がなければ、「貧血なし=問題なし」として、調べられていないのが現状です。
様々な不調の原因となる鉄不足の問題については、先日ご紹介した藤川徳美医師がブログでも多数の事例を紹介されていますので、同ブログのテーマ「鉄・貯蔵鉄・フェリチン」から関連する記事を順にご覧頂きたいと思います。以下はその一例です。
15~50歳日本人女性の99%に鉄不足がある、しかし99%の医者がそのことを知らない
妊娠中の鉄不足も非常に深刻な事態を招きます。
「ケトン体が人類を救う」の著者である宗田先生によると、出産時の胎児と母親のフェリチンを調べたところ、胎児のフェリチンが200もあるのに対し、母親のフェリチンが20以下である事例もめずらしくないそうです。私の場合も、MEC食をとりつつ、さらに栄養療法の検査結果から途中で鉄剤を増量して飲んでいたにも関わらず、なんと出産1ヵ月前(妊娠9ヶ月)にはフェリチンが15まで低下していたのです(妊娠前の値はフェリチン55)。妊娠によっていかに鉄が胎児に移行するかということを、私も身をもって知ることになりました。問題は、これが普通の採血では分からないということです。栄養療法を受けて「フェリチン」の推移を見ていたから判明したことですが、普通の妊婦検診では「貧血なし」として気が付かれません。この妊婦の「隠れ貧血」はその後様々な問題につながります。生まれてくる子供の発達障害やADHD、自閉症と関係があると言われていますし、産後うつ病の大きな原因とも言われています。1度の妊娠出産でこのフェリチンは50ほど低下するそうですので、鉄不足の改善無しに第2子を妊娠するとさらに貧血が悪化するのです。産後うつの病の発症率が、第1子よりも第2子、さらに第3子の出産後に高くなるのはそのためなのだそうです。。「産後うつ病と隠れ貧血」については、先日のNHKの「あさイチ」でも取り上げられましたが、もっともっと鉄不足の問題が広く世の中に周知されて欲しいと心から願います。
藤川医師のブログより
女性の命を守る治療~産後うつ病は予防できる!
ちなみに私の場合、妊娠9か月の時点からさらに鉄剤を増量したことによって、産後3ヵ月の時点ではフェリチン129まで上昇していました。産後2か月半で仕事に復帰ができ(これはお勧めしません)、さらに長時間手術にも耐えられたのは、やはりこの鉄の補充を十分かつ速やかに行うことができた上に糖質制限も行っていたためではないかと思っています。
この「隠れ貧血」を見つけるための値である「フェリチン」ですが、貧血を疑う症状があれば医療機関で保険で検査が可能です。しかし、「一般採血で問題ないからフェリチンの測定は必要ない」と担当医に断られてしまったという話も聞きますので、そこはご自身の担当医とよく相談してみてください。ちなみに、現在は自宅で自分で測定することができるキットが売られています(下の写真がそのキットです)。
高額(1万円程度)ですが、栄養療法を受ける時間が無い方や近くの医療機関で断られてしまった方にはその値段だけの価値があるものだと思います。フェリチンの値が10以下ですと重度の鉄不足です。なお、欧米ではフェリチン100以下で治療対象となるようですので、最終的には100以上を目指しつつ、まずは50以上にはなるように鉄分の摂取を試みて下さい。