※保険診療となるのは、授乳を前提とする陥没乳頭の治療の場合のみです。
※授乳を前提としない患者様は自費診療となります。
陥没乳頭の手術例
みかこクリニックでは、陥没乳頭の治療も行っています。
私が行っている陥没乳頭の手術の方法は、国際医療福祉大学三田病院形成外科元教授で、現在は新宿美容外科・歯科(ホームページは⇒コチラ)の院長でいらっしゃる酒井成身先生が考案された『酒井法』という方法で行っています。
酒井成身先生の御著書
右の写真のサインは、酒井先生の前の職場である国際医療福祉大学三田病院に見学に行った際、持参した酒井先生の教科書に頂いた直筆サインです。酒井先生には、眼瞼の手術も含めて、本当にたくさんのことを丁寧に教えて頂きました。それらは今も日々の診療に役立っており、とても感謝しています。
酒井法の詳細 酒井先生の御著書より
酒井法については、酒井先生が三田病院に勤務されていたときに何度か手術見学をさせて頂きました。また、酒井先生からは、ありがたいことに先生の手術法を録画したDVDも直接プレゼントして頂き、何度も見返して手術をマスターすることができました。酒井法で手術を行うと、再発の可能性が極めて低いという実感を持っています。特に、もう授乳する予定が無い患者さんの場合では、乳管の処理を行いやすいので、再発率は非常に低い方法と言えます。
下の写真は、酒井法で行った手術の術前・術後の写真です。
上の写真でご紹介した症例は、60歳代の患者さんでした。
整容的な改善が目的ではなく、清潔を保てないことを気にして手術を希望されました。
現在の保険制度では、陥没乳頭の手術は授乳を前提にした場合のみ認められることになっています。
授乳に問題がある場合だけ、保険を適用して手術を行ってよいということです。
酒井先生によると、授乳前の方でもこの酒井法で行えば、術後に授乳は可能なのだそうです。
実際に教科書には母乳が分泌している写真も掲載されています。
しかし、私としては将来的に授乳予定の方の手術には慎重な立場をとっています。「可能な限り、手術は避けたほうがよい。」というのが、私の個人的な考えです。「母乳が分泌される」ということと「授乳に問題なく母乳育児ができる」ということは、別のことだと思うからです。
もちろん、授乳前に酒井法で手術を受けられて、何の問題もなく授乳できた方も多くいらっしゃると思います。反対に乳頭の形態に何も問題がなくても、授乳に苦労するケースも多いわけですから、実際のところ、手術をしたことが授乳障害の原因なのかどうかなのか、それを確かめることは不可能なわけです。そうであるならば、授乳障害となるような原因は一つでも少ないほうがいいと思うのです。手術を行えば少なからず瘢痕はできますし、乳管を傷つける可能性もゼロではないわけですから。
授乳前の陥没乳頭手術は、私の個人的な考えとしては、できれば避けたい手術の一つですが、それでも、どうしても手術が避けられない場合があります。それは、感染を繰り返す場合です。
感染した場合の手術例
将来まだ授乳の可能性がある陥没乳頭の患者さんであっても、感染を繰り返す場合にはやむなく手術に踏み切ります。
陥没乳頭が原因で感染を起こした場合、『乳輪下膿瘍』という状態になります。感染を起こすと、膿が出口を求めて乳輪近くの皮膚が腫れ、場合によっては自壊して皮膚から排膿します。写真が無かったので詳しい方法の紹介は省略しますが、ドレナージ(膿を体外に排出すること)の特殊な方法も酒井先生から教えて頂きました。
感染をおこした陥没乳頭の患者さんの治療例をご紹介します。
患者さんは未成年の方でした。ある時、乳頭乳輪が腫れて痛みが出てきたので、かかりつけ医を受診し、県内の総合病院の乳腺外科を紹介され受診したそうです。通院するものの改善しないため、再度かかりつけ医の先生に相談し、その先生からご紹介を頂きました。診察してみると、まだ感染がおさまっていない状態でしたので、まずは酒井先生から教えて頂いたドレナージを行って感染を鎮静化させました。この状態から改善しなかったため、手術が必要と判断し、手術に踏み切りました。
下の写真は、手術の術前・術後の写真です。
未成年の患者さんですので、可能な限り乳管を傷つけないように、細心の注意を払って手術を行いましたが、全く乳管を傷つけていないとは言い切れない状態でした。感染で炎症を起こしている影響で、組織は硬く、酒井先生の教えの通り、乳管を引き延ばすようにハサミでゆっくりゆっくりと乳管の処理を行っても、なかなか乳管は引き出されて来ませんでした。確認のしようがありませんが、結果的には何本か乳管は切れてしまっている可能性はあると思います。幸い、術後の経過は良好で、乳輪下膿瘍の再発も陥没乳頭の再発も現在認めていません。
無事に治りましたが、手術を行わずに治療はできなかったのか?という疑問を持たれるかもしれません。陥没乳頭が軽度な方であれば、まずは感染を鎮静化させ、陥没乳頭の矯正を始めて、上手く陥没が改善されれば、手術は避けられたかもしれません。しかし、矯正を行うにしても、一旦感染してしまったケースでは、感染によりできた瘢痕が硬くなる時期があるため、矯正には不利になります。そうして矯正が進まなければまた感染を繰り返す、という悪循環になることが多いのです。
はたしてこの患者さんが授乳する段階になって問題が起こらないか、それは今の段階では誰にも分りません。彼女が将来問題なく母乳育児ができることを祈るばかりですが、治療法としてはこれ以外の選択肢は無かったと今でも思っています。できれば、このような状態になる前に、何らかの手を打つことができれば、それに越したことはないわけですので、以下では、そのための矯正方法をご紹介したいと思います。
手術を避けるために
上述しましたように、感染を繰り返すケースではやむなく手術をすることがありますが、私は授乳前の陥没乳頭の手術には慎重な立場です。それでは、手術を避けるためにどうすればよいのか、その保存的治療をご紹介したいと思います。
下の製品は、10年以上前から患者さんにお勧めして使用してもらっている器具です。(名前が変わったのか、類似品なのかは不明ですが、)以前はグッドニップルという商品名だったと記憶しています。いろいろと試しましたが、今のところ、この製品が良いと思っています。
患者さんに装着した状態を写真に撮らせていただきました。
接続チューブを装着し、注射器で陰圧をかけることで乳首を引き出します。
接続部分をはずすと、下の写真のような状態になります。
かつては、接続チューブがない商品があり、差込口が割れやすいというのが欠点でしたが、接続部分にチューブを使って陰圧をかけることで、製品が長持ちするようになったようです。
また、患者さんから、寝ている間に取れやすいという相談を受けました。
そこで、あるアイデアを思いつきました。
乳頭再建後に使用している乳頭保護器です。
先端をカットし、孔にこの矯正器具を押し込みます。
その状態で乳頭に装着し、注射器で吸引して陰圧をかけます。
使用した乳頭保護器はLサイズです。
さらに取れにくくしようと思ったら、テープ固定をするとよいと思います。
矯正なんかで治るのかと疑問を持たれる方もおられるかもしれませんが、矯正を軽く見てはいけません。授乳を経験された女性なら、ひっぱられることでいかに乳首が伸びるかはよくご存じだと思います。年頃の娘さんをもつお母さんには、ぜひとも娘さんの形態を確認して、必要であれば早めに矯正を始めてほしい!そうして感染や手術を避けて欲しい!と声を大にして言いたいです。
ちなみに、授乳前でも手術可能だと教えてくださった酒井先生も、必ず術前と術後に何らかの矯正治療を行われるそうです。ですので、『年頃になったら手術すればよい』、と考えるのではなく、『まずは矯正を開始』して、どうしようもなければ手術に踏み切るのだとお考えいただきたいと思います。
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