癌治療においてビタミン・ケトン療法が注目を集め始めているということを先日お伝えしました。エビデンス云々は横に置いておいて、生化学的な根拠があり、実際に効果があったという報告が多数なされているという情報それ自体は、なんとかこのブログや、もちろん私の患者さんにもお伝えしたいと思っているのですが、なにせ私の家族にさえ理解してもらうのにひと苦労する糖質制限の話ですから、診察室で短い時間しか接することのできない患者さんに伝えるのは、もっと大変なことです。世の中のすべての人に伝えたいというような大それた志はありませんが、思い入れを持って診察にあたっている自分の患者さんや、縁あってこのブログをご覧になっている乳房再建希望の方々には、乳癌の再発リスクも下がる『糖質制限と栄養の重要性』が伝わって欲しいなと、心から思います。
私の患者さんの中には、再発した状態で再建された方もいらっしゃいますが、糖質制限をすることによって、癌と共存していける可能性も高まります。下記にご紹介する、現在15歳で脂肪肉腫からの肺転移があるステージⅣの癌を抱えながら元気に日々を送っているコータくんもそのお一人です。
コータ君のお母さんのブログ「これが晃汰の生きる道」
コータ君を応援する熱血Ns Mrs. GAGAさんの糖質制限支援ブログ「低糖質に愛をこめて」
糖質制限は、乳房再建にも多いに関係があります。
これまで、再建をして乳房が完成した後に様々な理由から太ってしまい、健側とのバランスが悪くなってしまう患者さんを数多く見てきました。その患者さん方からは、必ずと言っていいほど「気を付けているけど痩せられない」という言葉を聞いてきました。太ってしまったからと言って、体重の増減に合わせてその都度再建をやり直すことはできないのですから、辛い状況の中でせっかく頑張って再建にチャレンジし完成させた乳房を、少しでも良い状態で少しでも長く維持して欲しいと、形成外科医として切に願うところです。
患者さんのダイエットの悩みや、再発の不安の声を聞くたびに、「糖質制限を勧めたい」と思いながら、これまで言葉を飲み込んできました。私は形成外科医ですので、私が癌治療そのものを行っているわけではなく、重い責任を引き受けて治療に臨んでいらっしゃる乳腺外科の主治医の先生への遠慮があったからです。しかし、私自身の糖質制限に対する理解が進めば進むほど、糖質制限は現在の癌治療を否定するものではなく、同時に行うことでその効果を上げるものですから、遠慮する必要はないのではないかと思うようになりました。どういう治療を選ぶのか、どういう生き方を選ぶのか、当然のことながらその決定権・主導権は患者さんご自身にあるのですから、患者さんがご自分で選択するための基礎となる情報については、今後は臆することなく開示していこうと思っています。
そんな気持ちもあって、しばらく立て続けに糖質制限シリーズを書いてみました。
また乳房再建の記事に戻りたいと思いますが、乳房再建と糖質制限は無関係ではないことが分かって頂けたと思いますので、今後はぜひ糖質制限の話も心の片隅に留めながら読んで頂ければ幸いです。
また折に触れて、有益な情報をお伝えできればと思います。