「生食の注入は何回の予定ですか?」
「何CCぐらい入れる予定ですか?」
これも患者さんから多くいただく質問ですが、前もってはわかりません。
もっと言うと、私の場合は注入の量は目安にしていません。
何を目安にエキスパンダーを拡張しているかと言えば、その方の『健側の皮膚の長さ』を一番の参考にしています。下垂乳房を再建する白石先生の再建方法(記事はコチラ)を学んでからこの方法に変えました。あくまで私のやり方ですが、参考までにご紹介したいと思います。
まずは、下垂のない方の場合です。
拡張の目安にしていること図解してみます。
まずは再健側の皮膚の長さが健側と同じだけ伸びていることを最重要視しています。
上の写真で示すと、 A=A’
さらに細かいことを言えば、
☆A'=A(健側の長さ)+切除予定の瘢痕の幅+α(0.5~1.5cm)
写真の患者さんでの実測値は以下の通りです。
A=24cm
A’=26cm(健側の長さ24cm+瘢痕切除予定幅5mm+αの1.5cm)
下垂のない方で、もう一つ重視しているのが突出度です。
再健側の突出度が健側を少し超えるところまで拡張しています。最終的には、3D画像撮影=ベクトラでも確認しますが、外来では患者さんに座ってもらい、上から確認するようにしています。
写真は診察台に上って頭上から撮影したものです。
前述の☆を満たした上で、突出度が健側以上になっているところまで拡張するのが理想と考えています。
そして数か月が経過し、写真提供にご協力くださった患者さんのインプラントへの入れ替えの手術が終わりました。
斜めからみると
いかがでしょうか。
改めてこの患者さんの経過をまとめますと、
この患者さんは二次再建の方でした。皮膚の状態がとてもよかったので、順調に拡張が進み、エキスパンダー挿入術から1か月後には生理食塩水の注入が終了しました。上記のように、拡張終了の目安は皮膚の長さで決めました。患側の鎖骨中点から乳房下溝線までの皮膚の長さが、健側に対し1cm長くなったところで注入を終了しています。その時点で生理食塩水の注入量が300ccで、入れ替え予定のインプラントが280ccのものと見込んでいましたので、その誤差はわずかでした。そのまま9か月待機して頂き、インプラントへの入れ替えが終了しました。
今回ご紹介した患者さんからは、写真使用に多大なご理解とご協力を頂きました。心よりお礼を申し上げます。
次回は、下垂のある患者さんの経過をご紹介します。