ノーズスレッド

2022年9月、東京西新宿で行われたJAAS主催のセミナーに参加して来ました。テーマは「鼻」へのスレッド&ヒアルロン酸注入二重の「埋没法」についてでした。

JAASというのは、日本アンチエイジング外科学会のことで、自費治療に関する研究会やセミナーなどを色々と企画している組織です。海外(特に韓国)で行われている最新の治療法を紹介するセミナーが企画されることもあり、私も以前に『高周波機器で二重を作るセミナー』に参加しました(記事は⇒こちらです)。残念ながらその治療法は日本で広まりませんでしたが、考え方や手技など、勉強になることは多くありました。

セミナーの内容は毎回異なり、第一線で活躍されている様々な分野の講師の先生が講義と実技を披露してくださいます。必ずしも自分がクリニックで行っている治療ばかりではないのですが、他のクリニックではどんな治療法を、どんな方法で行っているのか、美容診療に関する情報収集にもなりますし、診療のヒントになったりすることが多くあります。

今回のセミナーに参加する動機となったのは、テーマが『鼻』だったからでした。開院前と開院直後のころまでは、鼻へのヒアルロン酸注入も行っていたのですが、このところはずっと、みかこクリニックでは鼻へのヒアルロン酸注入はお断りするようにしていました。理由は、ヒアルロン酸の動脈塞栓による失明のリスクが高いエリアであること、皮膚に余裕がないために静脈の還流障害によって皮膚の血行障害も起こりやすい部位であることという安全上の理由がひとつ。そして、過去にヒアルロン酸の入れすぎで鼻根部が幅広くなるいわゆる『アバター鼻変形』の患者様を何度か拝見してきたので、鼻へのヒアルロン酸注入に対する抵抗感や拒否感が私の中にあったことでした。ですが、時々「鼻へのヒアルロン酸注入をしてほしい」というご相談をいただくことがありましたので、第一線の先生がどのように安全性を担保した上で治療を行われているのか、ぜひ知っておきたいと思い、東京行きの新幹線に乗ったのでした。

「鼻」をテーマにした講師の先生は、セイコメディカルビューティークリニックの曽山浩輔先生でした。曽山先生が講師のセミナー参加は今回が2回目でした。曽山先生は、オフレコでしか言えないという情報も含め、豊富な臨床経験から得られた有益な情報を惜しげもなく教えてくださるので、得るものがとても大きいと感じます。

曽山先生は講義の冒頭で、「安全に正しく結果を出す方法を伝えたい」と述べられ、デザインの基本やアバター鼻を避けるために守るポイント、実際の注入での注意点などを教えてくださいました。曽山先生は現在、鼻へのヒアルロン酸注入を単独で行われることがほとんどないそうで、必ず溶ける糸と併用されているとのことでした。溶ける糸と併用することで、ヒアルロン酸の注入量を減らせます。曽山先生は、糸と併用するので、ヒアルロン酸を1回に0.5㏄以上注入することはないとお話されていました。ヒアルロン酸の注入量が少ないほど、塞栓による失明のリスクや灌流障害による皮膚の血流障害のリスクが減り、安全性が高くなりますし、ヒアルロン酸の入れ過ぎや横への広がりによるアバター鼻を避けられるというお話で、とても理にかなっていると納得できました。

鼻への糸とヒアルロン酸注入の手技ですが、「少しだけ鼻筋を通したい」ぐらいの方がいい適応だそうで、しっかりと高くしたい場合にはプロテーゼを入れるべきだとおっしゃられていました。将来的にシリコンプロテーゼを入れる可能性がある人がこの手技を繰り返すと、瘢痕で手術がやりにくくなる可能性はあると思いました。絶対にシリコンは入れたくないけれど、ちょっとだけ鼻筋を通したいという方にはよい方法だと思います。

セミナーはとても勉強になったのですが、みかこクリニックの施術メニューとして取り入れることについては積極的には考えていませんでした。ところが、セミナーの話を聞いた当院の勇気あるスタッフが「施術を受けてみてもよい」と申し出てくれたので、これはありがたい!とばかりに施術を行いました。このスタッフでの結果が思いのほかよく、鼻筋を通しただけで彼女の美人度がぐっと上がり、その変化に皆で驚きました。「この施術は喜ばれる患者様が絶対たくさんいらっしゃいますよ!」というスタッフの言葉に背中を押され、別の方にもモニターになっていただき、さらに施術を行うことになりました。

その後、ブログでモニター患者様の募集を行い何名かの患者様にモニターになって頂きました。ここでは最初のモニター患者様の経過をご紹介します。

使用したのは、セミナーで紹介された鼻用のスレッド(糸)を2本と、チャウム4という硬いヒアルロン酸0.3ccです。頬にブロック麻酔をした後、鼻にもカニューレで局所麻酔をしてから施術を行いました。

再診時に、痛みに関する経過をお尋ねしました。施術時の痛みとしては、ブロック麻酔を打つときが少し痛かった程度で、施術中の痛みはなかったそうです。施術後の痛みについては、ブロック麻酔が切れてきた施術3〜4時間後に少し痛みを感じたので、処方された痛み止めを内服して就寝されたそうです。そして、翌朝にはもう痛み止めは必要ない状態だったと教えてくださいました。その後は触ると少し痛いという状態が約1週間続き、その後は触っても痛くなくなったようです。腫れに関しては、翌日に施術直後(写真中央)よりもう少し腫れたそうですが、その後は徐々に引いていき、約1週間で落ち着いたそうです。これは当院で先に施術を行ったスタッフとほぼ同じ経過だったと思います。

この施術は、鼻筋を通して鼻をすっきり見せたいという方に適しています。明らかに鼻を高くしたいという方はインプラントの方が適しており、この施術はお勧めできません。

◆ 鼻のスレッド+ヒアルロン酸料金

 施術費用:99,000円(税込)

※施術内容:鼻用スレッド2本+ヒアルロン酸(チャウム4)0.5cc以内注入

※カニューレ代、ブロック麻酔代は込みです。

※薬代別です。

※ヒアルロン酸をアラガン社製ボラックスに変更希望の場合、プラス1万円(税別)で変更可能です。

※鼻用スレッド4本希望の場合プラス2万円(22,000円税込み)で追加可能です。

モニター症例1⇒本人にだけ分かるわずかな変化

モニター症例2⇒鼻根部の段差が改善した例