乳頭乳輪再建 ~体験者の皆様への術後アンケート~

1 はじめに

 

私のブログで乳頭乳輪再建について連載を始めたのが2017年。その過程でいろいろと思考しているうちに、「自分が行っている乳頭乳輪再建の方法が患者さんにどんな結果をもたらしたのか?」、「生活に与えた影響はどのようなものだったのか?」というようなことが改めて気になるようになりました。また、痛みなどの客観的な数値に表れない事柄にについて、これから再建を考えている患者さんの参考になるような体験談を頂くことはできないだろうかと考えるようになりました。そこで、かつて乳頭乳輪再建を体験された患者さん方にお願いして、アンケートをとらせていただくことにしました。

実施したのは2017年。アンケートをお願いした患者さんは40名、そのうち31名の方が返信してくださいました。アンケートは郵送で、患者さんが遠慮なく答えを書けるように無記名で返送できる形にしましたが、多くの患者さんが手紙を添えて返信してくださいました。読んでいて嬉しくなる温かいお手紙も沢山いただき、アンケートにご協力くださった皆さまに心から感謝いたします。まだ数名の方が今後の経過を見てから返信したいとおしゃってくださっている段階ですが、このあたりで一度結果を集計したいと思います。

乳頭乳輪再建に関して簡単に復習しておきますと、乳頭の再建方法が「健側からの移植」または「局所皮弁」の2通り、着色の方法が「陰部からの植皮」または「タトゥー」の2通りあり、それぞれの組み合わせによって、全部で4通りの乳頭乳輪再建の方法があるということでした。

これらの方法については、『【解説】乳頭乳輪再建の方法』を参照してください。

私が担当した患者さんで多いのは、乳頭の再建方法が「健側からの移植」、着色の方法が「陰部からの植皮」の組み合わせです。これらの方法が患者さんの生活にどのような影響を与えたのか、私としては特にその点がアンケートから見えてくるのではないかと期待しました。

なお、31名分というアンケートの回答数自体は、学会などで発表するための調査としては少ないものでして、今回のアンケートにより一般化した結論を提供することはできません。ですが、回答の内容については、31名それぞれの患者さんが、「少しでも他の患者さんの参考になれば」と、心を込めて書いてくださったものばかりです。中には、お送りしたアンケート用紙に回答を書ききれないと、力作レポートを作成して送ったくださった方もいらっしゃいます。ある意味では一般論よりもさらに重要な、31名の患者さん個々の貴重な体験談を少しでもお役立ちいただければ幸いです。

それでは、次項からアンケート結果についてご報告していきたいと思います。

 

 

2 健側乳頭採取の術後の痛み

 

乳頭の再建方法として、私の担当する患者さんで多いのが「健側からの移植」であるということは前述しました。そこで、まずは、健側乳頭から組織を採取した場合における、術後のさまざまな様子についてのアンケート結果からご紹介していきます。

実際に手術を受けるにあたって、多くの患者さんが第一に心配されることが、術後の痛みがどの程度のものになるか、ということだと思います。

以下が、術後の痛みに関しての結果です。
回答をくださった31名のうち、健側乳頭から採取した患者さんが22名でしたので、22名の回答をご紹介したいと思います。

【乳頭採取側の術後の痛み】

1.痛み止めが必要なほど痛かった期間
0日   ・・・13名
1日   ・・・3名
1~2日 ・・・2名
2日   ・・・1名
3日   ・・・1名
7日   ・・・1名
思い出せない(のであまり痛くなかったと思う)・・・1名   計22名

2.少し痛いけど生活に支障がない程度に痛みを感じた期間
0日   ・・・6名
1日      ・・・1名
2~3日    ・・・7名
4~5日 ・・・2名
~7日 ・・・2名
~10日・・・1名
無回答  ・・・3名   計22名

3.完全に痛みが無くなるまでの期間
0日・・・5名
~7日・・・7名
~10日・・・3名
~30日・・・2名
無回答・・・・・4名   計22名

フリーコメントで多かったのが、
「採取側の痛みはほとんど無かった。」
「思い出せないぐらいなので、痛くなかったと思う。」
というものでした。
痛みを感じたとしても、術後数日だったという方が多いようです。

このアンケート結果からは、健側乳頭の採取側の術後の痛みは、痛み止めで十分コントロール可能な程度のものなので、それほど怖がる必要はないのではないか、という印象を受けます。

 

 

3 健側乳頭採取後の健側知覚の回復

 

「健側から乳頭を採取した場合、術後の健側の知覚はどうなるのだろう?」
「知覚は回復するのだろうか?それとも知覚は落ちたままなのだろうか?」
そのような不安や疑問を持たれる方も多いと思います。

【健側の知覚について】のアンケート結果です。

1 術前に比べて知覚は落ちましたか?

はい (知覚は落ちた)  ・・・・・8名

いいえ(知覚は落ちなかった)・・・・・14名     計22名

2 知覚が落ちたと答えられた8名の方にお聞きした質問です。
術前と比較して何パーセント程度になったでしょうか?(=何パーセントまで回復したか?)
90%     2名
85~90%  1名
80%     2名
70~80%  1名
70%               1名
40%               1名     計8名

どのくらいの期間で上記まで回復したかについての質問には、
多くの方が「覚えていない」または未回答でしたが、
記入してくださった方々の答えには1ヵ月、2~3ヵ月、1年、3~4年と幅がありました。

知覚に関してのアンケート結果をどう解釈するか、これは非常に難しい問題です。そもそも、その患者さんが術前に『乳頭の知覚』をどのぐらい意識・重要視して生活していたかによって答えが全く異なってきます。まったく意識していなかった方、または重要視していなかった方にとっては、術前後の変化にすら気が付かない可能性もあります。一方、乳頭の知覚が大事だった方にとっては、術後の知覚の変化が気になる場合もあるだろうと思います。

乳頭の知覚を意識する場面として最も多いのが、性感帯としての乳頭だと思います。なので、より正確に調べようと思えば、アンケート項目の中に「性感帯としての乳頭を術前にどのぐらい重要視していたか」ということを入れておかなければいけないのだとは思いますが、今回はそこまで踏み込むことはしませんでした。

今回のアンケートでは、知覚が落ちたと回答された方が8名、落ちなかったと回答された方が14名という結果でした。落ちなかったと回答された方が若干上回りましたが、私としては、乳頭の知覚を重要視している方は、「手術で知覚は落ちる可能性はある」という前提で決断された方がよいのではないかと思っています。

 

 

4 乳輪の着色方法として陰部から採皮した場合の術後の痛み

 

乳輪の着色方法として、私の担当する患者さんで多い方法が「陰部からの採皮」です。
陰部から採皮した場合の術後の痛みはどうなのか、
今回は、この点に関するアンケートの結果をご紹介します。

あらかじめ補足ですが、私の担当した患者さんでは、乳輪の皮膚の採取を1枚で行うことが多いため、乳輪の大きい方では採皮のための傷が大きく長くなりがちです。このこともアンケートの結果に影響していると思われます。
継ぎ目ができてもよいという方は2枚で採取しますので、傷は小さく短くなります。

整容性を優先するのか、傷の小ささを優先するのか、悩むところです。

さて、アンケートを返信くださった31名のうち、陰部から採皮した方は24名でした。

 

【陰部から採皮した場合の術後の痛み】

1.痛み止めが必要なほど痛かった期間
0日    ・・・14名
1日    ・・・3名
2~3日     ・・・2名
3日    ・・・1名
5日    ・・・1名
6日    ・・・1名
7日       ・・・1名
30日         ・・・1名    計24名
2.少し痛いけど生活に支障がない程度に痛みを感じた期間
0日  ・・・5名
2日  ・・・1名
2~3日 ・・4名
3日  ・・・1名
7日  ・・・3名
10日 ・・・3名
14日 ・・・2名
20日 ・・・1名
30日 ・・・3名
90日 ・・・1名      計24名

3.完全に痛みが無くなるまでの期間 (無回答の方4名は質問2の期間を回答期間としました)
0日  ・・・5名
3日  ・・・2名
5~6日 ・・1名
7日  ・・・5名
10日 ・・・1名
14日 ・・・2名
20日 ・・・1名
30名 ・・・3名
40日 ・・・1名
45日 ・・・1名
60日 ・・・1名
180日 ・・1名      計24名

アンケートの結果からは、痛みに関しては個人差が非常に大きいということが分かります。
ただ、アンケートに記名してくださって個人が特定できる患者さん方の経過を思い出してみると、「乳輪が小さいために、傷も小さく済んだ患者さん」ほど、術後の痛みは「ほとんどない」か「非常に軽い」ということは、傾向として言えると思いました。これは、実際に術後の経過を外来で見ていても感じることです。大きい傷ほど痛むというのは、考えてみれば当たり前のことかもしれません。

再建する乳輪の大きさ、採皮してできた傷の長さと、術後の痛みや合併症との相関も出せると良かったのですが、術前に乳輪径を計測していませんでしたので、今後の課題としたいと思います。

 

 

5 乳輪着色方法として健側乳輪から採皮した場合の術後の痛み

 

乳輪の着色方法として『健側乳輪から採皮した場合の術後の痛み』についてのアンケート結果をご紹介します。

アンケートを返信してくださった31名のうち、植皮で着色を行った方が27名で、そのうち健側乳輪から採皮した方は4名でした。

【健側乳輪から採取した場合の術後の痛み】

1.痛み止めが必要なほど痛かった期間
0日   ・・・2名
2日   ・・・1名
7日   ・・・1名   計4名

2.少し痛いけど生活に支障がない程度に痛みを感じた期間
0日   ・・・1名
3日   ・・・1名
無回答・・・・・2名   計4名

3.完全に痛みが無くなるまでの期間
0日   ・・・1名
6日   ・・・1名
30日  ・・・1名
無回答・・・・・1名   計4名

健側乳輪から採皮した方の母数が少ないのですが、全体の印象としては、陰部から採皮した場合よりは、健側乳輪から採皮した場合の方が、術後の痛みが軽いという感じを受けました。それでも、痛みに関してはやはり個人差があるということが分かります。

 

 

6 術後の安静期間

 

つづいては、乳頭乳輪を再建された方が、

【実際に術後にどのくらい安静にされたのか?】
【仕事の休みはとったのか?】

に関するアンケート結果です。

1. 健側乳頭移植+植皮 の方(22名)

①健側乳輪からの植皮 の方(4名)
●仕事をしている方(1名)は休みをとったか?
休みをとった(7日)・・・1名
●仕事をしていない方(3名)で家事ができなかった期間
0日間・・・1名=生活に影響がなかった
2日間・・・1名
無回答・・・1名

②陰部からの植皮 の方(18名)
●仕事をしている方(11名)は休みをとったか?
休みをとった・・・8名
(1日 3名、7日 2名、14日 2名、30日 1名)
※休みを取られた8名の方のうち、5名の方が体を使う仕事でした。
休みをとらなかった・・・3名
※休みを取らなかった3名の方は、いずれも体を使わない仕事でした。
●仕事をしていない方(6名)で家事ができなかった期間
0日間・・・5名
2日間・・・1名
●仕事していたか無回答の方(1名)
(コメント) 入院中(1泊2日)の間のみ安静にした。退院後は通常の生活だった。

2. 健側乳頭移植+タトゥー の方(1名)
術後休みはとらなかった
(コメント) 遠方だが、術後運転して帰れた。

3. 局所皮弁+陰部からの植皮 の方(6名)
●仕事をしている方(5名)は休みをとったか?
休みをとった・・・5名
(1日 1名、3日 1名、7日 1名、10日 1名 14日 1名)
※休みを取られた5名の方のうち、3名の方が体を使う仕事でした。
休みをとらなかった・・・1名

4. 局所皮弁+タトゥー の方(2名)
●仕事している方は休みをとったか?
休みをとらなかった…1名
記憶なし・・・・1名

アンケート結果からは、やはり陰部から採皮した場合に安静を要したということが分かります。

陰部から採皮した場合に、術後に安静にしないと必ずしも高率に合併症を起こすというわけではありませんでしたが、体を使う仕事の方で傷が大きい方は、合併症を起こしやすくなるということは言えると思います。

次項では、陰部から採皮した場合に合併症を起こされた方の検討をしたいと思います。

 

 

7 陰部からの採皮した場合の術後合併症

 

アンケートの結果からではありませんが、陰部から採皮した場合、術後に合併症が起きた方(=傷に問題があった方)
について調べてみました。

陰部から採皮した方が24名で、そのうち術後の陰部の傷に問題が起きた方は、カルテを調べた限りでは4名いらっしゃいました。それらの4名の方がどのような状況であったのか、カルテの記載と記憶が残っている限りでご紹介したいと思います。

 

Aさん:術後に創(傷)が離開し、再縫合するも、再々創離開したため、二次治癒させた方
Aさんの場合で考えられる要因としては、BMIが高かったこと、比較的大きめの乳輪であったが採皮は1枚で行ったこと、美容業界で術後早期から立ち仕事に復帰していたこと、などがあったと思います。

 

Bさん:術後創離開
Bさんの乳輪のサイズは中程度で、大きくはありませんでしたので、1枚で採取しました。看護師さんで、術後すぐに職場復帰する必要があったそうです。復帰後、患者さんのベッド移動で患者さんを抱えて中腰になった瞬間、「ブチッ」という音がして、傷が開いたそうです。再縫合するほどの大きさでもなく、そのまま二次治癒させました。私自身、術後の安静はある程度必要だと考えさせられたケースでした。

 

Cさん:術後創離開
Cさんの乳輪サイズは大きく、2枚で採取する方法も選択肢にあがったのですが、整容性を優先し、1枚で採取しました。やはり医療関係の仕事の方だったため、術後に安静にはできなかったそうです。創離開が起こりましたが、開いてから少し時間が経過していたので、そのまま二次治癒させる方針としました。この経過のせいで、術後の痛みが非常に長引いて、とても辛かったようです。

 

Dさん:術後創離開と浸出液
Dさんの乳輪サイズは小さめだったので、迷わず1枚で採取しました。術後しばらくして傷から浸出液が出たので見てみると、その部分が小さな傷(穴)になっていたそうです。傷は小さかったため、軟膏処置で治癒しました。特に体を使う仕事ではなかったようです。

 

以上、4名の経過をご紹介しましたが、その4名中3名の方で、術後の安静を保てなかったことと合併症が関係している可能性があると思われました。その3名の方のうち2名は乳輪が比較的大きい方でしたので、やはり、『傷が大きいにもかかわらず安静が保てない場合には合併症が起こりやすい』可能性があるのだと思います。

合併症を減らすためには、縫合する形成外科医の技術を向上させることが大前提ですが、それと同時に、この方法を選ばれる患者さんが、合併症が起こりやすい要因があるのかについても考える必要があると思いました。傷が治りにくい要素があるか、乳輪の大きさがどうか、術後の安静が確保できるのか、などなど、患者さん個々について検討し、方法を選ぶべきだと思いました。合併症が起きやすそうであれば、タトゥーを選択するか、整容性は若干落ちますが、継ぎ目のある2枚で皮を採取して傷を小さくする工夫を加えるなど、さらに検討する必要があると考えさせられました。

 

 

8 陰部から採皮した場合の術後管理の工夫

 

「陰部から採皮した場合の術後の創部の管理」についてもコメントを頂きましたのでご紹介します。

私の患者さんに対しては、陰部の傷にはワセリンを塗布し、トイレの後はウォシュレットを使用、生理用のナプキンを当てるように説明していたのですが、今回のアンケートから、その方法ではうまくいかない患者さんがいらっしゃることが分かりました。

 

Aさんのコメント(原文のまま)
術後の痛みも、直ぐにはあまり記憶に残らない程度の痛みでしたが、ソケイ部の傷口と下着のラインが丁度擦れる所だったので日にちが経つほど擦れて痛みもアップ!
「ノーパン・ビジダーム」というかわし技を編み出すまでは、ヒリヒリピリピリと結構痛かったです。
塗り薬やワセリンは下着がネタネタになるだけで、傷口を治す効果は低いかと。みんな下着にもっていかれます。傷口と下着のラインが重なった場合は、最初からソケイ部の傷が治るまで下着はナシでいいかもしれません。(←普通の女性には受け入れ難い提案ですが)
ビジダームも下着をつけると、どうしてもヨレてしわくちゃになって効能を発揮できなかったです。

 

Bさんのコメント(原文のまま)
体を使う仕事のため、ソケイ部の傷がなかなかくっつかず、出血や下着がすれることによる痛みに悩まされた。傷をガーゼで保護してもすぐ取れてしまい、自分に合うボクサーパンツを見つけるまで、下着選びが大変でした。

※Bさんは前項でご紹介したCさんと同じ方です。

 

Bさんは乳輪が比較的大きい患者さんでしたが、Aさんは小~中程度の大きさでしたので傷が特に大きいというケースではありませんでした。でも、傷が大きくなくても、下着のラインと傷が一致してしまうと、痛みの原因になるようです。採取する場所は患者さんによって異なりますので、傷が下着のラインと一致してしまうような方の場合には、Aさんのようにノーパンにするか、Bさんのようにボクサーパンツを使用することで、下着と傷が一致しないようにする工夫が必要だと分かりました。Aさん、Bさん、貴重なコメント、本当にありがとうございました!!

 

 

9 乳頭の高さがどのくらい保たれているか

 

「術後の再建乳頭が現在何%保たれているのか」に関するアンケート結果です。

1.健側乳頭移植  23名
20%    ・・・1名(術後2年)
30%    ・・・1名(術後3年)
30~40% ・・・1名(術後1年半)
40~50% ・・・1名(術後5年)
50%    ・・・5名(術後2年、3年、4年、5年2名)
70~80% ・・・1名(術後2年)
80%    ・・・2名(術後1年、1年半)
90%    ・・・1名(術後2年半)
100%   ・・・5名(3ヵ月2名、1年、1年半、3年)
無回答  ・・・5名(よく分からない)

「乳頭の高さは何割保たれていますか?」という質問をしたので、健側の乳頭の高さに関する質問と思われた患者さんもいらしゃったことが、コメントを読んで分かりました。健側と再建側の両方についてお尋ねするべきだったと思います。いずれにしても、結果にばらつきがあることが分かります。

2.局所皮弁 8名
①二葉弁・・・5名  軟骨あり 5名
10% ・・・1名 (術後2年・肋軟骨)
40% ・・・1名 (術後3年・肋軟骨)
50% ・・・1名 (術後5年・肋軟骨)
60% ・・・1名 (術後1年半・肋軟骨:スポンジ保護を継続している)
70% ・・・1名 (術後9年・耳介軟骨)

②Star flap 軟骨あり 3名
30% ・・・1名 (術後6年・肋軟骨)
50% ・・・1名 (術後4年・肋軟骨)
100%・・・1名 (術後3年・耳介軟骨)
「再建乳頭の術後の保護を継続しているか」という質問には、
局所皮弁の二葉弁の方1名を除き、全ての方が行っていないという結果でした。

乳頭の高さがどのくらい保たれているかは、かなり結果にばらつきがありましたので、主観的な評価に加え、やはり高さを計測するなど、客観的な評価も加える必要があると思いました。今後の課題にしたいと思います。

 

 

10 術後に困ったこと

 

『乳頭乳輪再建術後の生活で、何が一番困りましたか?』という質問への回答です。

無回答(覚えていない含む)・・・8名
何もない、困らなかった  ・・・6名
その他          ・・・17名
・寝返り
・再建箇所の手当て
・皮膚採取部のかゆみ
・入浴時に体を洗うこと
・湯船につかれなかったこと
・テープかぶれ
・それぞれの傷のケア
・陰部の痛み
・乳頭のスポンジ保護
・トイレ(排尿が沁みる)
・生着するか心配だった

以上の結果から見えてくるのは、
術後の傷の痛みや痒みという問題以外で生活に支障があるのは、
入浴に関する不便があること、傷のケアに手がかかることだったようです。

 

 

11 再建して良かったですか?

 

アンケートの最後に、『再建して良かったですか?』という質問もさせて頂きました。

再建して良かった・・・29名
無回答     ・・・2名
※アンケート開始初期の2名の方には、『再建して良かったですか?』という設問を加えていませんでしたので、無回答としましたが、1名の方は文面から再建して良かったということが読み取れました。

ほぼ全ての方が「再建して良かった」と答えてくださったのは、私にとってもとても嬉しく、またほっとしました。しかし、再建して良かったと思った方だけがアンケートを返信してくださった可能性もあります。むしろ、返信の無かった9名の方に目を向けなければならないのだと思います。すべての方に満足して頂くのは難しことだとは分かっていますが、あくまでも、すべての方に再建して良かったと言って頂くことを目指していくしかありません。

『再建して良かったですか?』に対する回答の理由のコメントをご紹介します。
(ほぼ原文のままですが、お礼のコメントは省略しました)

・自分の乳頭やソケイ部の皮膚を使うため(乳頭健側移植+植皮を受けられた方)、やはり、色、大きさのバランスが良いと思います。乳頭乳輪の再建は、やるかやらないか迷われる方も多いかと思いますが、私個人としては、思い切って一気にやってよかったです。“無い=乳ガン”の気持ちが軽くなって、背筋がシャキンと伸び 明るくなれます!!

・病気になったという負の感覚をあまり感じなくてよい。旅行をしても温泉にも入れる(傷跡を隠したりはしますが)

・術前と同じ生活が出来ているから。銭湯へも温泉へも行けています。術前と多少は違っているかもしれませんが、それほど違和感を強く感じる事はありません。(他の人はあまりわからない様です!)

・乳房再建をしても乳頭がなければ意味がないと思います。

・旅行が趣味でしたので、温泉に入った時にちらっと見えてもあるとないとでは違うと思います。

・気持ち的に胸があるっていう安心感がある。

・絶対にするべきです!!毎日お風呂に入る時に、自分の胸を見ても依然と全然変わらず、気持ちも落ち込まずに済みました。先日5年目の検査に行ったとき○○病院の看護師さんに「どちらの胸を再建されたんでしたっけ?」と尋ねられた位に綺麗に仕上げて頂きました。

・パッと見た目にはほとんど再建とわからない位キレイにして頂けました。私はやって良かったと思っています!

・やっとすべて解放された。心が軽くなりました。

・服着用時はほとんど外から見て分からないし、毎日温泉へ行っていますが、少しタオルで隠せばまず気が付く人も無く、とってもうれしいです。

・自然に見えるから

・本当に良かったと思っております。胸のふくらみがあれば良いという考え方もあると思いますが、私は乳頭乳輪があるお陰で、乳ガンの事も忘れてしまう程普通の生活ができていると感じます。

・同じ部位を移植しているので(健側と半分にしたので)抵抗感がない。健側をバストアップしてもらえた。乳頭乳輪があってこそバスト再建の仕上がりになり、入浴等にも乳ガンの傷跡(心の方も)気にせず過ごせます。出来上がったときの大変嬉しかったことを思い出します。

・乳房再建ができたのでしたら、乳頭乳輪の再建もした方が、精神的にも良いと思います。乳頭・乳輪があると手術した事も忘れてしまうくらい、元の姿になります。温泉もまわりが気にならないです。日常生活でも、前向きに元気になります。

・温泉に堂々と入れる。胸の事を考える時間がほとんどなくなった。スポーツも始め、積極的に行動できるようになった。

・想像を遥かに超える自然な仕上がりに、術後初めて自分の乳を見た時、すごく嬉しかったです。乳頭乳輪まで施術して「胸」として完成と言いましょうか。二次再建時の胸のふくらみだけでも十分嬉しかったのですが乳頭乳輪がない乳は、なんと言いましょうか「おっぱいののっぺらぼう」みたいだなぁ、と思っていたので。

・温泉も気にせず行ける。

・何といっても見た目も片方の乳房とかわらず、何の違和感もありません。

・自分のなかでは、乳房の再建だけでかなり満足していましたが、母と姉に見せた時、もうひとつ反応がなく、やはり乳頭乳輪がないせいかと思いました。今回のはまだ見せていないので、楽しみにしています。

・再建に見えない。乳房を含め、全摘したと自分でも思えない。

・せっかく乳房を作ってもらって、乳頭まで作って完成と最初から思ってました。先生のブログで『刺青の人が少なく、あまり、、、』と見て「え!今ごろカミングアウトかい!」とPCにつっこみました(笑)。最初から私はなぜか、迷わずこの方法(健側乳頭移植+タトゥー)を選んだのですが、神の手を持つ高木先生のおかげで、あれよあれよという間に作っていただき、ただただ感謝です。見たい方がいればいつでもお声をかけてくださいませ。

・孫とお風呂に入る時も苦にならず、幸福を感じております。

・自然な感じに仕上がると思います。私は後悔していません。

・「有る」と「無い」では気分が違います。温泉に行ってもなければ気を使うけれど有れば気兼ねも少ない。それに乳房再建に比べれば、術後もそんなに大変ではない気がします。ただ、やはり乳輪乳頭の再建は「続けてやるぞー」というモチベーションが必要かとは思います。

・乳頭の高さは維持できなかったけれど、のっぺらぼうよりは、ちゃんと乳房がある安心感がえられるから。

以上です。

本当に読んでいて嬉しくなり、ジーンと来てしまいました。
結果にご満足頂けていない可能性のある方々のことを心に留めつつ、さらに技術を磨こうと思います。

今回のアンケートでは、木沢記念病院形成外科スタッフにも忙しい業務と併行して郵送の手続きなど協力をしてもらいました。スタッフにも感謝したいと思います。そして、何よりご協力くださった私の患者さん方、本当にありがとうございました。

【完】